さまざまな病気の治療に使われる漢方薬 心身のバランスを整えて症状の改善へ
漢方とは、古来、中国から伝わり、日本人に合うように工夫されてきた日本の伝統医学です。「暮らしの中の漢方薬」では漢方薬についてわかりやすく、シリーズでご紹介していきます。
漢方薬は、ざまざまな病気の治療に使われている
漢方薬は自然界にある植物や動物、鉱物を原料(生薬)とし、複数を組み合わせて薬として確立されたものです。古く、中国から伝わり、日本の気候・風土、日本人の体質に合うように工夫され、独自に発展をとげてきました。漢方の治療原則は、熱ければ冷まし、冷えていれば温める。足りないものは補い、多過ぎるものは取り除く。このようにして、心身のバランスを整えることで、さまざまな症状の改善が期待されます。
参照:日本漢方生薬製剤協会「漢方の解説」
漢方薬が治療に使われるのは、次のような病気です。
漢方薬が治療に使われる病気
アレルギー疾患
アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、気管支喘息など、漢方薬には免疫力を高めたり、調節する働きがあるため。慢性のアレルギー疾患に対しても、症状の改善が期待できます。
生活習慣病
高血圧の「のぼせ」や「不眠」、「イライラ」など。糖尿病の「足の痛み」や「しびれ」、「かすみ目」などの随伴症状の改善が期待できます。
心の病気
ストレスによるイライラ感や不眠症、うつ症状など、漢方薬は心とからだの両面に働きます。抗うつ薬や精神安定薬、睡眠薬を減らすためにも使われます。
女性の病気
月経異常、更年期障害、不妊症など、女性ホルモンの変化がからんだ婦人科疾患は、漢方薬のもっとも得意とする領域です。
冷え性
手足、腹部などの「冷え」は、放置すると頭痛、肩こり、腰痛、月経痛などを招くことがあります。漢方薬では「冷え」や「冷えに伴う種々の症状」の改善が期待できます。
手術後の体力低下
手術の後に、体力・気力が回復しない、食欲が出ないなど、手術で一時的に受けたダメージから、なかなか回復しないときにも漢方薬は使われます。
参照:日本漢方生薬製剤協会「漢方は素晴らしい!漢方薬の特徴」
「証」とは、症状だけでなく、その人の体質などからとらえた病態のこと
漢方は、病気にかかっている人の状態を、体質、病気の状態、環境などを含めたさまざまな角度からとらえた「証」に基づいて治療します。「証」とは、漢方医学的な診断であり、治療の指針にもなります。「証」を診断する物差しには「気血水」、「虚実」、「「寒熱」などがあります。「証」は随時、変化するので、その時々の「証」を診断することが大切になります。
参照:漢方セラピー クラシエの漢方 漢方について知る「漢方とは?」
からだを作る「気・血・水」
漢方では、人のからだは「気・血・水」の3つの要素で校正されていると考えられています。この3つはお互いに影響しあっています。
人のからだを作る3つの要素
気
目には見えないが、人のからだを支えるすべての原動力のようなもの
血
全身の組織や器官に栄養を与えるもの
水
飲食物中の水分からできた、からだをうるおすもの
「気」が不足すると、疲れやすくなる・やる気が起こらなくなり、「気」の流れが滞ると、気持ちが沈んだり不安が強くなったりすることがあります。
「血」の不足は、肌が乾燥したり顔色が悪くなったりし、「血」の流れが滞ると、体の冷えやのぼせ、肩こりが起こったりします。
「水」の流れが滞ると、体がむくんだり、下痢をするようになります。
参照:漢方セラピー クラシエの漢方 漢方について知る「漢方とは?」
参照:Kampoful Life by クラシエの漢方 漢方の基礎知識3「気血水とは」
虚と実、寒と熱
「虚証」と「実証」は体格や体力で分類する物差しです。
「寒証」と「熱証」は寒がりか暑がりかで分類する物差しです。
虚実、寒熱
虚証
力が足りない状態で、体力が弱って病気への抵抗力が落ちている人
実証
力が余る状態で、体力があって病気への抵抗力が強めの人
寒証
熱が足りていない状態で、寒気や冷えを感じる人
熱証
熱がたまった状態で、ほてりやのぼせを感じる人
参照:漢方セラピー クラシエの漢方 漢方について知る「漢方とは?」
同じ症状でも体質に合わせた治療を行うのが漢方
同じ病名でも、体質によって病気の性質が異なるため、漢方では体力の弱っている人と体力のある人では治療法が異なります。漢方治療は、各自に備わる自然治癒力を最大限に発揮できるように、心身のバランスを整える全人的医療です。
体力が弱っている「虚証」体質の人には、病気と関係の深い虚弱状態に対して体力をつける治療を行い、病気からの回復力を高める必要があります。
体力がある「実証」体質の人には、病気の原因になっている余分な部分を除き、全身の働きを円滑にする必要があります。
参照:漢方セラピー クラシエの漢方 漢方について知る「漢方とは?」
漢方薬の飲み方
漢方薬は、白湯またが常温の水で飲む
漢方薬は、原則として、白湯(温かいお湯)で飲みますが、用意がない場合は常温の水で飲みましょう。冷え性の方やからだを温める漢方薬を服用する場合は白湯で飲んだり、お湯に溶かすのがお勧めです。
味が苦手な場合は、オブラートなどに包んで飲んでも構いません。そのまま服用する場合は、少量の白湯や水を口に含んでから、漢方薬を、含んだ白湯や水の↑に入れて一気に飲み込み、最後にたっぷりの白湯や水と一緒にのみ込みましょう。漢方薬を飲みやすくするゼリーなどを活用することもできます。
せんじ薬からエキス剤へ
漢方薬というと生薬を土瓶などに入れ、煎じて生薬の成分を煮出すイメージがあると思います。
現在では生薬から抽出したエキスを顆粒・細粒、錠剤に加工したエキス製剤などが多くなっていて、用途に応じて使い分けが可能です。また、1日2回タイプの漢方薬も増えてきていることから、お薬を飲むわずらわしさが軽減され、飲み忘れの防止にもつながっています。
薬を飲むタイミング
漢方薬は、胃の中が空っぽの状態で飲むと吸収がよいとされ、食事の30分~1時間前(食前)、または食間の服用が基本です。空腹時に飲むと胃の調子がよくない方や、飲み忘れた場合には、医師・薬剤師に相談してください。
他のお薬との併用
病院では、漢方薬と西洋薬を一緒に処方されることがありますが、これはお互いの不足しているところを補うためです。
ただ、2か所以上の病院で漢方薬が別々に処方された場合、あるいは市販薬を飲む場合には注意が必要です。期待通りの薬効があらわれなかったり、逆に薬効が増強されるなど、思わぬ現象が起きる可能性があります。お薬を併用する場合は、必ず、医師・薬剤師に相談しましょう。
参照:漢方セラピー クラシエの漢方 漢方について知る「漢方薬の種類と選び方は?」
参照:漢方セラピー クラシエの漢方 漢方について知る「漢方薬の正しい飲み方・飲みやすくするひと工夫は?」
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