慢性的な痛みや冷えると悪化する痛みに漢方治療は効果的

痛みは身近な症状です。腰痛・肩こりや関節痛などは日常生活でよくみられる症状ですが、原因が明らかでない場合もあります。このページは、慢性的な痛みにお悩みの方に読んでいただきたい痛みの治療のおはなしです。生活習慣の見直しで痛みを軽減する方法もご紹介します。

さまざまな種類がある「痛み」。代表的な痛みの原因は?

身体に生じる痛みにはさまざまな種類がありますが、腰痛や関節痛などは日常生活でよくみられる症状です。慢性的に痛みが持続する場合や原因が明らかでない場合もあります。

代表的な痛みの原因について紹介します。

腰痛・肩こり

腰痛の多くは原因を特定しにくく、運動不足による腰の周りの筋力低下や、姿勢の悪さにより腰に負担がかかることで起こるとされています。原因を特定できる代表的な疾患として、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などがあり、これらは背骨の神経が圧迫されることで痛みが起こります。

肩のこりや痛みは、首や肩に負担がかかり、筋肉が緊張して血行が悪くなることが原因です。また、加齢によって肩関節を構成する骨や腱などが老化し、炎症が起きることも肩の痛みを引き起こすと考えられています。

参照:日本整形外科学会 症状・病気を調べる「腰痛」
参照:日本整形外科学会 症状・病気を調べる「肩こり」

筋肉痛・こむらがえり

筋肉痛は運動に伴って起こる筋肉の痛みです。運動によって傷ついた筋線維を修復するときに炎症が起こり、痛みを引き起こすと考えられています。

突然筋肉がつるこむらがえりは、筋肉が異常に収縮して痙攣を起こしている状態です。運動中や就寝中に発生することが多く、強い痛みを伴います。こむらがえりの原因は、ミネラルバランスの乱れ、発汗による脱水、冷えなどによる血行不良と考えられています。

参照:恩賜財団済生会 症状別病気解説「筋肉痛」

関節痛

関節痛の原因は、スポーツなどでの負傷のほかに、変形性関節症、関節リウマチ、痛風などの病気があります。関節痛のうち最も多いのは変形性関節症によるもので、加齢とともに骨と骨との間でクッションの役割をする軟骨がすり減って痛みが起こります。


 
一般的に、腰や肩の痛み、筋肉痛、関節痛などを緩和するために炎症を抑えて痛みを和らげる作用を持つ解熱鎮痛抗炎症薬が使われます。解熱鎮痛抗炎症薬には、内服薬(飲み薬)と外用薬(湿布や塗り薬など)があります。

痛みの背景には病気が潜んでいることがあります。痛みが激しい場合や持続する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

参照:恩賜財団済生会 症状別病気解説「関節痛」

痛みの特徴や体質に合わせて行う漢方治療

痛みの治療に使われる漢方薬は、特に慢性の痛みや冷えると悪化するものに向いているといわれています。漢方では痛みの特徴や体質を見極めて、一人ひとりに合わせた治療を行います。


参照:漢方セラピー クラシエの漢方「痛み・しびれ」

漢方の視点から見た「痛み」には、「気」や「血」が関係

漢方では、身体活動のエネルギーである「気」や全身に栄養を運ぶ「血」のめぐりの悪さや不足によって痛みが生じると考えます。例えば冷えることで起こる関節痛は、気候因子の一つである寒邪が体内に侵入し、気血の流れを滞らせることが原因と考えることができます。

漢方薬は古くから痛みの治療に使われており、古典にも記載されています。痛みの部位や体質にあった漢方薬を選択して治療します。

痛みの部位や、体質にあった漢方薬の選択

腰痛

八味地黄丸、牛車腎気丸、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、疎経活血湯、苓姜朮甘湯

筋肉痛

芍薬甘草湯葛根湯、疎経活血湯

関節痛

桂枝加朮附湯、芍薬甘草湯、疎経活血湯

手や肩の痛み

葛根湯

参照:漢方セラピー クラシエの漢方「痛み・しびれ」

痛みの治療に使われる漢方薬

八味地黄丸

  • 体力中等度以下
  • 四肢が冷えやすい
  • 尿量減少または多尿

牛車腎気丸

  • 体力中等度以下
  • 四肢が冷えやすい
  • 尿量減少
  • むくみ

疎経活血湯

  • 体力中等度
  • しびれ

当帰四逆加呉茱萸生姜湯

  • 体力中等度以下
  • 手足の冷え
  • 下肢の冷えが強い

芍薬甘草湯

  • 筋肉の急激なけいれん
  • こむらがえり

葛根湯

  • 体力中等度以上
  • 肩こり

桂枝加朮附湯

  • 体力虚弱
  • 手足が冷えてこわばる
  • 尿量が少ない

苓姜朮甘湯

  • 体力中等度以下
  • 腰から下肢に冷えと痛みがある
  • 尿量が多い

参照:合田幸広・袴塚高志 監, 日本漢方生薬製剤協会 編「新 一般用漢方処方の手引き」, じほう, 2013.
 

ご自身の症状タイプに合った漢方薬を専門の施設へ相談してみてください。

漢方病院検索結果へ(痛みを相談)

生活習慣の見直しが、痛みの予防や軽減につながる

日常の無意識な行動の中に痛みの原因が潜んでいるかもしれません。痛みの予防や軽減のために生活習慣を見直してみましょう。また、激しい痛みでない場合はセルフケアを試してみましょう。

1.腰痛・肩こり

腰や肩に負担をかけないことが大切です。良い姿勢を心掛け、猫背や腰を反った姿勢にならないように気をつけましょう。日頃から適度な運動を行い、腰や肩の周りの筋肉をつけると予防になります。セルフケアとして、ストレッチやマッサージで筋肉をほぐすと血行が良くなり痛みの軽減につながります。腰痛に効果が期待できるツボもあります。

  • 腎兪(じんゆ)

ウエストの高さで背骨から指2本分外側

  • 志室(ししつ)

ウエストの高さで背骨から指4本分外側

 

参照:クラシエ 漢方療法推進会「漢方(中医学)における腰痛に対する養生法」

2.筋肉痛

筋肉痛は普段使わない筋肉を急に動かしたときに起こりやすくなります。適度な運動をして筋肉を動かす習慣をつけておきましょう。運動後の筋肉痛は、セルフケアで軽減できる場合がほとんどです。ぬるめのお湯でゆっくり入浴し、お風呂上りにはストレッチを行って血行を良くしましょう。十分な睡眠をとり、身体をしっかり休ませることも大切です。

参照:長寿科学振興財団 健康長寿ネット「筋肉痛の予防と治す方法」

3.こむらがえり(足のつり)

運動中や就寝前に水分補給を行い、ストレッチで血行を良くしましょう。就寝時の冷え対策に靴下を履くのも予防になりますが、締め付けが強いとかえって血行を悪くすることがあるのでゆったりとしたものを選ぶようにしましょう。

ミネラル不足を防ぐことも大切です。筋肉の収縮や神経の伝達をスムーズにする働きがあるカルシウムとカリウム、これらの調整作用を持つマグネシウムの摂取を心掛けましょう。カルシウムは乳製品や大豆製品、骨ごと食べられる魚に多く含まれ、カリウムはイモ類やバナナなどの果物に豊富です。マグネシウムは海藻類、ナッツ類に多く含まれています。

参照:Kampoful Life by クラシエの漢方「寝てる時に急に足がつる(こむら返り)の原因・治し方・予防法と対策」

4.関節痛

関節に負担をかけないために、関節を冷やさないようにし、同じ姿勢を続けることや急激な動作を避けましょう。関節周辺の筋肉を鍛え、ストレッチで関節を柔軟にしておくと関節痛の予防になります。関節の周囲が張って痛むときは、お風呂などで温めてほぐすと痛みが和らぎます。ただし、熱を持って腫れているときは温めずに冷やしましょう。

参照:クラシエ 漢方療法推進会「関節痛の漢方治療と養生法」