その疲れ、胃腸の働きが低下しているかも?疲労倦怠の漢方治療

疲労倦怠は肉体的、精神的に体のだるさや疲れやすさを感じる状態です。十分な睡眠で回復する場合もありますが、慢性的になると日常生活のパフォーマンスも低下することになります。このページでは、身体的な疲れを感じている方に読んでいただきたい疲労倦怠の治療のおはなしです。日常生活で疲れをためない方法もご紹介します。

疲労倦怠は体が休息を求めているサイン

疲労倦怠は日常的に感じることのある症状で、体が休息を求めているサインです。原因は様々なものが考えられますが、複数の原因が関連していることも多くあります。

疲労には肉体的なものと精神的なものがあります。また、休息や睡眠によって回復する一時的なものと、なかなか回復しない慢性的なものがあります。

疲労倦怠の原因には以下のようなものがあります。

疲労倦怠の原因

  • 過労や激しい運動
  • 睡眠不足
  • 栄養不足
  • 精神的ストレス

参照:恩賜財団 済生会「倦怠感・だるさ」
 

病気が関係している場合もあります。

疲労倦怠の原因となる病気

  • 感染症や慢性炎症性疾患、悪性腫瘍
  • 貧血や心疾患、肺疾患などによる低酸素
  • 低血圧
  • 糖尿病や甲状腺機能低下症などの内分泌ホルモンの分泌異常
  • うつ病や不安障害
  • 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)※

過労や栄養不足など原因に心当たりがある場合は、十分な休息をとり、食事による栄養補給を行いましょう。食事はバランス良くとるように心掛けましょう。

十分な休息をとっても疲労が回復しないとき、あるいは倦怠感が長く続くときは、何らかの病気が隠れている可能性があります。無理をせず、早めに医療機関を受診しましょう。
 

※筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とは
原因不明の強い疲労が6カ月以上続き、社会生活に支障をきたす「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」という病気があります。この病気では、安静にしても疲労が回復せず、活動により悪化することがあるのが特徴です。疲労以外に体の痛み、思考力の低下、不眠などの多彩な症状が認められます。

参照:吉原一文:心身医. 2017; 57(3)282-289.

あなたの疲労倦怠は、胃腸の働きが低下した「気虚タイプ」それとも栄養不良も伴う「気血両虚タイプ」?

それでは、漢方の視点で疲労倦怠の原因を考えてみましょう。

漢方では、疲労倦怠を身体活動のエネルギーである「気」が不足している「気虚」の状態と考えます。気を作り出すには消化器系の機能を担う「脾(ひ)」の働きが重要であり、胃腸の機能が低下した「脾虚」の状態では、十分な気を作り出せず、疲労倦怠が生じやすくなります。また、全身に栄養を運ぶ「血」が不足している「血虚」の状態でも疲労倦怠を感じやすくなります。

漢方では、一人ひとりの体質や症状を見極めて治療を行います。胃腸の働きが低下して身体活動のエネルギーが不足した「気虚タイプ」と、栄養不良の血虚も同時に伴う「気血両虚タイプ」の症状をご紹介します。

参照:Kampoful Life by クラシエの漢方「【倦怠感とは?】倦怠感は漢方で早めに改善」

漢方治療では、体質や症状に合わせて薬と使い分け

漢方では、胃腸の機能を高めたり、気や血を補ったりすることで疲労倦怠を治療します。疲労倦怠に使われる漢方薬はいくつかあり、体質や症状に合った漢方薬を選択して治療します。代表的なものに補剤と呼ばれる気や血を補う漢方薬があります。

疲労倦怠の治療に使われる漢方薬

補中益気湯

  • 体力虚弱
  • 元気がない
  • 疲れやすい
  • 虚弱体質
  • 疲労倦怠
  • 食欲不振
  • ねあせ
  • 感冒

十全大補湯

  • 体力虚弱
  • 疲労倦怠
  • 食欲不振
  • ねあせ
  • 手足の冷え
  • 貧血
  • 皮膚乾燥

人参養栄湯

  • 体力虚弱
  • 疲労倦怠
  • 食欲不振
  • ねあせ
  • 手足の冷え
  • 貧血
  • 不眠
  • せき

参照:合田幸広・袴塚高志 監, 日本漢方生薬製剤協会 編「新 一般用漢方処方の手引き」, じほう, 2013.

 
ご自身の症状タイプに合った漢方薬を専門の施設へ相談してみてください。

漢方病院検索結果へ(疲労倦怠を相談)

日常生活でできる疲労倦怠対策 日頃から疲労をためないように心がけて

疲れやだるさを感じたら早めに対処し、疲労を蓄積させないようにしましょう。また、疲れにくい体を作る生活を日頃から心掛けましょう。

1.十分な睡眠をとる

睡眠は体や脳の疲れをとる最も有効な方法です。十分に休息をとり、疲れをためないようにしましょう。

2.バランスの良い食事をとる

栄養不足は疲労倦怠の原因の1つです。糖質、脂質、タンパク質だけでなく、ビタミンやミネラルもバランス良くとるように心掛けましょう。薬膳として、胃腸の働きを高めるヤマイモやナツメがおすすめです。

3.適度な運動をする

日頃からウォーキングや水泳などの運動を行い、体力をつけておきましょう。運動することでぐっすり眠ることができ、質の良い睡眠にもつながります。

4.ストレス解消を心掛ける

精神的ストレスも疲労倦怠の原因です。自分に合ったストレス解消法を見つけ、ストレスをためないようにしましょう。ぬるめのお風呂にゆっくり入ってリラックスすると安眠にもつながるのでおすすめです。

参照:Kampoful Life by クラシエの漢方「【倦怠感とは?】倦怠感は漢方で早めに改善」

5.ツボを刺激してみる

気を補うことが期待でき、疲労に効くとされているツボがあります。代表的ンツボに「気海」「足三里」があります。体がだるいときに刺激してみましょう。