練馬総合病院 中田 英之先生

漢方医

練馬総合病院

中田 英之(なかた ひでゆき)先生

  • ※全ての情報は掲載時のものです。
    現在の状況とは異なる場合があります。

順天堂大学医学部附属練馬病院と日本大学医学部付属練馬光が丘病院が、これまで練馬区における拠点病院でしたが、今年から当院も練馬区の拠点病院として指定されまして、この地域における重責を担っております。

来院される患者さんのほとんどは、地元の方が多いですね。
ただ、私の科は漢方の外来なので、診療圏としては他の科と一部重なる部分もありますが、半径30kmくらいになりますでしょうか…他の科が半径10kmくらいですから、少し広いかもしれませんね。
とても特殊な例ではありますが、飛行機でいらっしゃる患者さんもおります。

それは、本当にまれなケースではありますけどね!

とにかく、漢方の考え方を利用していかにして治療するか!に尽きます。
いろいろな病院を回って最後に当院へいらっしゃる患者さんもおられますので、一つでも二つでも症状を取り除くことができればと思っております。本当にただそれだけなんです…。

西洋医学は、治療を開始するにあたって白黒をはっきりさせるという面がありますが、東洋的思想の陰陽の考え方に基づく漢方では、必ずしも白黒をはっきりつける必要がありません。グレーな状態でもそのまま丸ごと受け止めて診療します。陰の中にも多少の陽の要素があり、陽の中にも多少の陰の要素があるという考え方に基づいているのですね。おおむね白とか、おおむね黒といった場合には、西洋医学で治療できるのですが、実際の臨床ではそのどちらにも当てはまらない場合も多いのです。そういう状態を、私は「すきま」といっておりますが、その「すきま」を埋めていくことが私の仕事だと思っております。

私は元々産婦人科医として働いていたのですが、そのときに感じていたことがありまして…。

 

がんなどの手術の必要がある治療や、抗生剤やホルモン治療などの西洋医学的な治療法には熱心な先生が多かったのですが、そのいずれの治療法にも当てはまらない患者さんになると…意外に感じるかもしれませんが、熱意を失ってしまう先生方が多いように思いました。この積極的治療にあてはまらない患者さんは、私が診ていた外来でも場合によっては半数近くおりました。しかし、患者さんにしてみれば、月経時の不快感や眩暈ひとつをとってもなかなか症状が改善されないので、何度も来院されるのですね。けれど、何度診察しても明確な原因が分からないものですから…

 

そのうちに、心の病ではないか?といったことになってしまい、心療内科を紹介され、そこで抗精神薬などを処方されて、本来の症状が改善されないまま他の病名が付けられたりする、気の毒な患者さんもいらっしゃいました。それでも、このようなはっきりとした治療法が見つからない患者さん達は「わらをもすがる思い」で病院にいらしているので、私としては一本の「わら」になれたら本望だというのが、漢方医を始めたきっかけの一つでした。西洋医学的に積極的治療が当てはまらない状態とは、まさにグレーな状態であり、このような「すきま」を埋めていく、これこそが漢方治療の領域だったのです。

 

それから、自衛隊病院に勤めていたときに、自衛隊の駅伝チームの健康管理においても漢方を使っておりました。そのチームを優勝できるような強いチームにしようという目的で取り組んでいたのです。強くなるために、トレーニングによって体に付加をかけて、記録を伸ばすための実験をしているようなものなんですね。ただ選手の中には、記録が思うように伸びないまま故障したりして、チームを去っていくようなケースもありまして…そんなときには、とても切ない気持ちになってしまい…任期満了で退団していく場合なども、そのあとがどうなったのかが気になるのですね…大会が終わるまでは、おおいに盛り上がるのですが、その後が寂しいんですよ…ただ、この漢方を取り入れての試みは、大きな成果をあげることができました。

 

トレーニングを積んでいく上での体のメンテナンスの指導などにも力を入れておりましたので、退団後もトレーナーなどで活躍している方もいるんですよ!そういう話を聞くと励みになるんですよね!

 

物事には光があたる部分と影の部分があると思うのです。私はどちらかというと、影の部分に小さな光を灯したい!という思いがあります。産婦人科にいたときの話もそうでしたが、はっきりとした治療法が当てはまらない状況に置かれて、悩みを抱えている患者さん達に対する気持ちも、それと同じようなことだと思います。

 

最近は、はっきりとした治療法が当てはまらない症状を抱える患者さんが増えてきておりまして…先ほどお話しました「すきま」が広がってきているように感じております。
西洋医学的な治療法が当てはまらないグレーな状態の患者さんが増えてきており、当院では、産婦人科や皮膚科、心療内科など、さまざまな科にまたがって診ております。原因がはっきりしない状態で症状を抱えている患者さんに、ほんの少しでも良いから希望の光をと言う気持ちは、漢方医を志したとき最初の時から、なんら変わりはありません。

単発での勉強会や講習会、中医大学などの高額な講座はあるのですが、その間を埋めるような、漢方をトータルで学べる機会があまりないのですね。そんな中、漢方に対する需要は高まり患者さんは増えているのですが、漢方医の数は、それに追いついていっていないのが現状です。当院もマンパワー的にそろそろ限界なものですから、このようなトータルで行う勉強会を通じて、少しでも漢方を志す先生が増えてもらえれば、という思いもあって活動しております。

 

漢方以外にもさまざまな話をしております。冷え性や月経不順、不妊症などの悩みを食生活で改善するといった話や、生活が昼夜逆転しているような方には、生活習慣改善の話をさせて頂くこともあります。アロマや散歩でのリラックス効果の話をするときもあります。考え方を少し変えるだけも違う場合がありますので、荘子などの本をお渡しすることもあります。漢方の中に流れている考え方や思想が何よりも大事だと考えております。

 

漢方の処方は、あくまでも道具にすぎないのです。一般の方でも馴染める内容になっておりますので、ぜひ参加頂ければと思います。

50名くらいになりますが、半数くらいは一般の方になります。隔週で第一、第三火曜日に開催しており、来年の3月まで20回を予定しております。

そうですね…40代くらいの方が多いでしょうか。

極力睡眠をとるようにしております。週の半分は、だいたい21時30分~6時30分までしっかり寝るようにしています。とはいっても業務のスケジュールにもよりますから、なかなかきっちりとはいきませんが…とにかく忙しいのですね。健康医学センターと漢方医学センターの2つの診療科を管理していますので、さまざまな業務を回していかないとなりません。他にも会議や勉強会の準備やら諸々ありますので、週2~3日ではありますが、しっかり寝ないともたないのですね…。

 

常にベストな仕事ができるよう維持管理し続けていくことが大事だと思います。

基本は、食べ過ぎないことですね。
極端に聞こえるかもしれませんが、玄米と味噌汁、魚とおしんこがあれば十分ではないかと思います。とはいえ、それを毎日食べている訳ではありませんよ!

 

毎日30品目を摂りましょう!といわれたりしておりますが、それは、それだけの種類の食材を食べないと、体に必要とされている比率の栄養素が摂取できないというのが前提にあります。それぞれの食材には、その食材に応じた栄養素が入っております。あるものにはビタミンが多く、あるものには脂質が多く、あるものには蛋白質が多く、といった具合なのですね…ですが、それが比率通りに体に摂り込まれているのかというと、そうではないのです。

 

そもそも人間の体というのは、必要なものを摂り込み、そうでないものは摂り込まないようになっているのです。ですので、それほど気にする必要はないのではないでしょうか。きっちり30品目を摂ろうとしたら、逆に過剰摂取となってしまい、肥満につながる可能性もありますから…。

 

漢方的に考えるならば、できるだけ素に近いものを食べていればよいと思います。
魚なら、頭からしっぽまで食べるとよいとされています。4つ足の動物は、大き過ぎますので、漢方的な考え方には当てはまらないのですね。素に近いものとして玄米や豆などは、そこから生命が誕生します。生命を生み出す栄養素に満たされている食材を食べるということは、理に適っているのではないでしょうか。

 

ただ、現代は砂糖にしても塩にしても精製されたものが多くなってきております。精製されたものは、素の状態からかけ離れている訳です。それはとても不自然な状態といえます。不自然な状態のものを食べているのですから、当然、体のバランスも崩れてきてしまいます。ただ、美味しさを追求していくと、どうしても精製され加工された食品にならざるを得ない事情もあるかと思います。美味しさを追求し精製し過ぎたことで、本来の健康から離れていくなんて、なんとも複雑な思いがします。できるだけ素に近いもので、素朴に、ほどほどに美味しいといったレベルで留めておければよいのですが…。

通勤だけで1万歩は歩いていますね!院内だけでも4~5千歩は歩いていると思います。電車の乗り換え時などに気合を入れて階段を上り下りするだけでも、それなりの運動量になりますしね。

世の中には、さまざまな健康法がありますが、朝出かける前に、玄米のおにぎりを一つ食べるだけでもよいと思います。アトピーのお子さんなども玄米ごはんを食べることで、ずいぶんと症状が改善されます。それから、精神がイライラしがちな方にも効果がありますので、ぜひ試してみて下さい。注意して欲しいのは、玄米と白米を半々に炊くようなことはお勧めできません。玄米だけで炊くようにして下さい。炊くときの水分量がそれぞれ異なりますので、一緒に炊いてしまうと美味しく召し上がることができません。それに、体調改善という意味においても、玄米のみで炊いて召し上がるようにして頂ければと思います。玄米は白米よりカロリーが低いですから、肥満の予防にもなります。

 

誤ったダイエット法により、体調を崩される方が当院の外来にもいらっしゃいますが、玄米でしたら、無理のない自然なダイエット効果が期待できるのではないでしょうか。

それほど明確な何かがある訳ではなく、あるがままといいますか…ただ、先ほどもお話しましたように、とにかく患者さんが今よりほんの少しでも安心できるようになって頂くことですね。ただそれだけに尽きます!特別なことなど何もありません。例えば何かを目指して、「こうあるべきである」と思った瞬間に、無理な力がかかってしまうと思いませんか?…ものごとには、善と思われていることの中に、ほんのちょっとした悪の要素があったり、悪だと思われていることの中に、ほんのちょっとした善の要素があったりして…そう考えると、はたして何が正しいことだったのか、分からなくなってしまう…といったことが往々にしてあると思うのです。

 

患者さんとの出会いは一期一会の気持ちで、その日その日できることを精一杯やって、患者さんに少しでも早く治って頂くよう診療に取り組んでいくだけです。

先生の略歴ご紹介

練馬総合病院
中田 英之(なかた ひでゆき)
漢方医学センター長

略歴:
平成7年 防衛医科大学校卒業 産婦人科入局
平成7年~17年 防衛庁医官として、防衛医大産婦人科、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院の他、第六後方支援連隊にて部隊勤務を経験
平成13年~17年 自衛隊仙台病院 産婦人科・漢方外来
平成17年~21年 慶應義塾大学医学部 漢方医学講座所属(現漢方医学センター)
平成21年 練馬総合病院着任(漢方内科外来担当・健康医学センター長)
平成23年1月 練馬総合病院 漢方医学センター長に就任

専門医:
日本産科婦人科学会 専門医
日本東洋医学学会 漢方専門医

日本東洋医学会 EBM特別委員会委員、広報委員会委員

 

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