山口病院(川越) 奥平 智之先生

漢方医

医療法人山口病院

奥平智之(おくだいら ともゆき)先生

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    現在の状況とは異なる場合があります。

当院は、平成になってから建てかえられリニューアルしました。創立70年になります。以前は、産婦人科を中心とした病院でしたが、現在は精神神経科、内科の外来、そして精神神経科の309床の入院施設があります。山口現朗先生を中心に全スタッフが一致協力して、患者さんのための病院を目指しています。川越駅・本川越駅からとても近く、川越駅前のアトレ・丸井、クレアモールのすぐそばにあるので便利ですよね。

はい。漢方は心身に作用しますが、メンタルな面は主に西洋の現代医薬で治療し、それに伴う周辺の身体症状を、患者さんのQOL(生活の質)の向上を目的に主に漢方で治療します。
ただし、軽いうつや不安、軽い不眠には、漢方のみで治療をしております。

鍼灸をしていた父親の影響もあり、幼い頃より東洋医学の世界に親しんできました。
医学生時代から、個別の臓器にわけて診るのではなく、一人の人間の心と体全体を1つとして捉え、バランスの崩れたところを元に戻して健康体へと戻していくという視点も非常に大切だと思っていました。
昔から風邪をひいたり、体調がすぐれないときは、私も漢方薬をよく飲んでいます。

精神科での漢方は主に3つの使い方があると思います。1つは、精神科で処方されるお薬の副作用の軽減。2つ目に、精神症状。3つ目に、身体症状に対して。

精神科での漢方の適応として整理しますと…
1. 軽いうつ状態、不安焦燥、気分変調症など(うつ病や統合失調症などそのものの治療は、原則として現代医薬で行ないます)
2. 抗不安薬や抗うつ薬などの服用が副作用やその他の理由で困難な場合
3. 現代医薬では効果が出なかったり、以前の症状を悪化させてしまう場合
4. 身体的愁訴の多い身体表現性障害など

『一つの処方で複数の症状に対応できる』のが漢方薬の強みです。
西洋薬の場合は症状ごとに薬を使う場合が多く、症状が多ければそのぶん薬の種類も増えてしまいますので、肝臓への負担などを含め慎重に経過管理する必要があります。

私の入院患者さん、外来患者さんには、更年期障害、自律神経失調症、心身症、神経症、精神不安、月経不順、冷え症、胃炎、胃もたれ、悪心・嘔吐、便秘、頭痛、めまい、腰痛、肩こり、疲労倦怠、食欲不振、口渇、むくみ、湿疹、感冒、アレルギー性鼻炎、陰萎、肥満症などについて幅広く漢方治療を行なっております。
向精神薬などの副作用に対する漢方薬の併用治療としては、肝機能障害、浮腫、口渇、月経困難、起立性調節障害、鼻閉、排尿困難、肥満、便秘などを対象にしています。

あとは、疲れやすい、食欲がない、元気・活力がない患者さんが多いので、現代医薬と漢方の「補気剤」を併用するケースが多いです。
精神症状や精神科の薬による口のかわきで、水をたくさん飲む方が多いので、「利水剤」もよく使用します。
精神科で出すお薬を飲む量が多い方は、体を冷やしている可能性があります。そのような方には体を温める漢方を処方します。
SSRIやSNRIなどの抗うつ薬でまれに吐き気などがみられることがあります。そのようなときは、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、五苓散(ごれいさん)、六君子湯(りっくんしとう)などを併用して喜ばれています。

漢方治療を行なう際の基本は、「気」の異常、「血」の異常、「水」の異常と3つに分けます。
気血水のバランスを整えることで、その人の精神のストレス軽減、身体症状の軽減を目指します。

「気」の異常は、「気うつ」「気虚」「気逆」の3つがあります。
「気うつ」とは、抑うつ気分、不安、喉のつかえ感などを特徴とします。気剤の半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、香蘇散(こうそさん)を用います。
「気虚」とは、意欲低下、易疲労感、風邪をひきやすい、消化器機能の低下などを特徴とします。補気剤として、六君子湯(りっくんしとう)や参耆剤(じんぎざい)の補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を用います。
「気逆」(気の上衝)とは、冷えのぼせ(上熱下寒)、せき込み、顔面の紅潮、頭痛、動悸、焦燥感などを特徴とします。桂枝湯類(けいしとうるい)の桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などを用います。

「血」の異常は、「瘀血」と「血虚」の2つあります。
「瘀血」とは、月経異常、腹部の膨満感や圧痛、皮膚の粘膜のうっ血などを特徴とします。
駆瘀血剤(くおけつざい)の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などを用います。
「血虚」とは、皮膚の乾燥と荒れ、眼精疲労、貧血、こむらがえり、頭髪が抜けやすいなどを特徴とします。

「水」の異常は、「水滞」です。
「水滞」とは、浮腫、尿量の異常、頭重感、めまい、水様の鼻汁などを特徴とします。

漢方薬は現代医薬による治療とは大きな違いがあります。イライラ(焦燥)の治療を例にとりますと、現代医薬による治療ではイライラそのものをターゲットにします。これに対して漢方治療では、『心身一如』として、イライラの背景にある「心身のバランスの乱れ全体」を是正してくれます。その結果として、イライラも軽減します。漢方治療では現代医薬と違って、眠気などの副作用がない利点があります。しかし、基本的には、「漢方医学的診察・診断」のもとに一人一人のその時点の個人の体質にピッタリあった処方がなされなければ、効果がないようです。

精神科のように比較的長期的にわたって現代医薬を飲むケースが多い場合、副作用の心配がいつもついてまわります。しかし、その人のそのときの体質にピッタリあっている漢方薬を併用すると、現代医薬の副作用が軽減されたり、全身の「自然治癒能力」が増加して、体調も整ってきます。

漢方薬は、多様な愁訴を改善し心身両面に作用し、一剤で多様な病態の改善を図ることができるため、医療経済的にもメリットがあると思います。また、副作用が発現しやすい虚弱な方、高齢者などの自然治癒力を高め、「生活の質Quality of Lifeの向上」につながります。

『未病を治す』とよく言われるように、『予防医学』も漢方医学の大きな特徴です。病気になる前に、身体の状態を調べて、バランスを整えておけば、病気は未然に防げます。日頃の運動や食生活、そして漢方でいつまでも元気に美しくありたいですね。

ストレスがたまったらフィットネスクラブで汗を流します。体が軽くなり、とっても爽やかな気分になれます。家では好きなテレビを見ながらの~んびりストレッチ体操をしたりしています。マッサージ、鍼灸、アーユルベーダ(インドの伝承医学)なども好きです。
休暇がとれたら、野外キャンプなどで、自然の中で心と体をリフレッシュさせたいと思います。ウォータースポーツでは、スキューバーダイビングが好きですね。

「東洋医学ワールド」は本当に奥が深いです。
これからもいろんな先生方の御指導をいただきながら、日々研鑽をつんでいきたいと思います。そして、患者さんの「心と体の健康」に少しでもお役にたてればと思います。

先生の略歴ご紹介

奥平智之(おくだいら ともゆき)先生
日本栄養精神医学研究会 会長
山口病院 副院長

日本大学医学部卒後、日本大学医学部精神医学系精神医学分野に入局。日本大学医学部附属板橋病院、東京都立広尾病院の神経科を経て、現在、埼玉県川越市にある医療法人山口病院に勤務。同大学医学部附属板橋病院東洋医学科、東京女子医科大学東洋医学研究所(非常勤講師)で漢方外来を10年程担当。栄養医学的治療においては、新宿溝口クリニックセミナー講師を経て、現在では、全国で講演活動を行なっている。2016年に日本栄養精神医学研究会を設立。

専門:
栄養精神医学
精神科漢方
認知症、うつ病、躁うつ病、統合失調症、不眠症、ストレス関連疾患、発達障害における食事栄養療法・漢方治療などによる減薬・体質改善

資格:
認知症専門医・指導医(日本認知症学会・日本老年精神医学会)、漢方専門医(日本東洋医学会)、精神科専門医・指導医(日本精神神経学会)、精神保健指定医(厚生労働省)、精神保健判定医(医療観察法)、日本体育協会公認スポーツドクター、日本医師会認定産業医など

活動:
日本うつ病学会評議員・双極性障害委員会フェロー、日本スポーツ精神医学会理事、日本心身医学会代議員、日本未病システム学会評議員、埼玉県公安委員会指定医(認知症専門)、埼玉県立川越特別支援学校校医、食事栄養療法倶楽部(FNC)代表、日本認知症ネットワーク代表、日本鍼灸師医師交流会会長、埼玉県西部地区東洋医学研究会世話人、埼玉若手漢方医会会長、東京若手漢方医会会長、川越市医師会学術・認知症対策委員、精神鑑定など。

栄養専門精神科医として、「メンタルヘルスは食事から」「認知症対策は食事から」「感染対策は食事から」をモットーに、全国で啓発活動を行っている。

ホームページ
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書籍
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1. 「食べてうつぬけ~鉄欠乏女子(テケジョ)を救え!~」
2. 「血液栄養解析を活用!うつぬけ食事術~栄養型うつ?」
3. 「鉄欠乏女子(テケジョ)救出ガイド」
4. 「栄養型うつを治す!奥平式スープ」
5. 「奥平式うつよけレシピ」
雑誌「精神看護」(医学書院):栄養精神医学 連載など

 

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