良い眠りに導くための漢方的アプローチ ~満足に眠れないと悩むあなたに~

ストレスや体の不調で不眠症に悩まされている人は多いようです。「眠れない」と悩んでいる方に読んでいただきたい不眠症治療のおはなしです。日常生活をちょっと見直すだけで安眠につながる方法をご紹介します。

加齢やストレス、心身の病気など、不眠症の原因は様々

不眠症は、日本人の5人に1人が悩んでいる、ごくありふれた病気です。原因は、加齢やストレス、こころや体の病気など様々です。不眠症の問題点は、日中に出現する様々な不調により生活の質を低下させることです。誰でも心配事のあるときや楽しいイベントの前などに「眠れない」ことを経験したことがあると思います。でも、「眠れない」ことが長期間続き、日常生活に支障をきたしているとしたら、それは不眠症です。
参照:土井由利子. 日本臨牀 2009; 67 (8): 1463-7.

 
不眠症の症状は、次の4つのタイプに分類されます。

不眠症の4つの症状
① 寝つきの悪い「入眠障害」
② 眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」
③ 早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」
④ ぐっすり眠れた満足感が得られない「熟眠障害」

 
不眠症の原因は次のようなものがあります。

不眠症の原因

  • 鼻の症状

老化現象に伴う生理機能の低下や生体リズムの変化など

  • 生活習慣や睡眠時の環境

交替制勤務などで昼に眠る必要がある、騒音や光、寝室の温度や寝具が体に合っていないなど

  • ストレス

不安や心配事、楽しいイベント前の気の高ぶりなどによるストレスや緊張

  • 薬や刺激物

降圧剤などの薬による副作用、たばこ、カフェイン、アルコールによる覚醒作用など

  • 体の病気

胸苦しさ、咳、痛み、かゆみ、頻尿など何かの病気による症状

  • こころの病気

神経症やうつ病、統合失調症など精神的な病気

参照:厚生労働省. e-ヘルスネット「不眠症」

不眠症治療は、薬物療法と非薬物療法の両面からアプローチ

不眠症の治療は、お薬を使う「薬物療法」と、お薬を使わない「非薬物療法」があります。
薬物療法には脳の活動を休ませて眠りへと導く薬や、体内時計を調節して睡眠と覚醒のリズムを整えて睡眠を促す薬などがあります。非薬物療法には不眠症の原因となる問題にアプローチし、睡眠へ導くための生活指導などがあります。
参照:国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部「不眠症(Insomnia)」

漢方の視点から見た「不眠症」、関連しているのは「気」

それでは、漢方の視点で不眠症の原因と治療について考えてみましょう。漢方では、眠りには「気」が関連していると考えます。「気」は目には見えませんが人の体を支えるすべての原動力のようなものです。不眠は気の流れが停滞した状態、あるいは、気の産生の低下や消費が多い状態などによって生じると考えられています。

参照:漢方セラピー クラシエの漢方 漢方薬を選ぶ「不眠」

その不眠症、「不安・焦燥感タイプ」それとも「悲哀感タイプ」?

漢方では眠りを妨げる原因に働きかけ、良い眠りに導いていきます。

不安などの精神症状や興奮しやすい「不安・焦燥感タイプ」の人は、気をめぐらせ、こころを落ち着かせることで、脳の興奮からくる不眠を改善するようにします。疲れやすく悲哀感が強い「悲哀感タイプ」の人は、足りない気を補うことで不眠を改善するようにします。
あなたの不眠症は、「不安・焦燥感タイプ」と「非哀感タイプ」のどちらに当てはまりますか?

参照:Kampoful Life by クラシエの漢方「【漢方流解説】不眠症の症状タイプ別におすすめの漢方薬を紹介」

不眠症の治療に使われる漢方薬

「不安・焦燥感タイプ」「悲哀感タイプ」それぞれで使用される漢方薬を紹介します。

不安などの精神症状や興奮しやすい「不安・焦燥感タイプ」

抑肝散加陳皮半夏

  • 不安がある
  • 神経過敏である
  • 焦燥感がある
  • 怒りっぽい

柴胡加竜骨牡蛎湯

  • 不安がある
  • 焦燥感がある
  • 動悸がする
  • 易疲労感がある
  • 興奮しやすい
  • 驚きやすい

疲れやすく悲哀感が強い「非哀感タイプ」

加味帰脾湯

  • 意欲低下がある
  • 食欲不振がある
  • 全身倦怠感がある
  • 虚弱体質である

参照:日本東洋医学会学術教育委員会 編集「専門医のための漢方医学テキスト」, 南江堂, 2009.

 
ご自身の症状タイプに合った漢方薬を専門の施設へ相談してみてください。

漢方病院検索結果へ(不眠症のことを相談)

眠れないときの対処法 生活の中のちょっとした心がけが不眠改善につながる

日常の何気ない行動の中に睡眠のサイクルを妨げる原因があるかもしれません。日頃から、安眠につながる生活を心がけることが大切です。生活習慣を見直して、自分流の安眠法を工夫してみましょう。

1.朝起きたら太陽を浴びる

太陽の光を浴びると体内時計がリセットされて、夜になると自然に眠くなるように睡眠リズムが整ってきます。また、体内時計を整えるには、平日・休日にかかわらず、同じ時刻に就寝・起床するとよいでしょう。

2.就寝前に飲酒、喫煙をしない

アルコール、カフェイン、ニコチンには覚醒作用があり、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠の質も低下させます。

3.テレビ、スマホは寝る1時間前まで

テレビやスマホは脳を刺激するため、寝る直前まで診ていると眠くなりづらくなります。

4.規則正しい食事を心がける

朝昼晩、規則正しい食事の時間を心がけて、極端な空腹や満腹のまま眠ることのないようにしましょう。夜食を摂るときは消化の良いものを、軽めに摂りましょう。

5.適度な運動をする

ウォーキング、水泳などの中程度の運動を習慣的に行うとよいとされています。逆に、激しい運動は、かえって睡眠を妨げます。

6.ぬるめのお風呂に入る

ぬるめのお風呂にゆっくり入ることで手足の血行が良くなり、リラックスすることで心身の緊張をほぐします。

参照:Kampoful Life by クラシエの漢方「【漢方流解説】不眠症の症状タイプ別におすすめの漢方薬を紹介」

不眠症に効くツボ……「安眠(あんみん)」
安眠は、耳の後ろの下に見勝手とがっている骨(乳様突起)の出っ張りから、指1本分下にある部分(うなじとぶつかる辺り)にあります。
人差し指、中指、薬指の3本を使って、全体的にさするか、親指で5~10回ほど押しながら揉みます。この部分が硬く、痛みを感じたら、体が睡眠を求めているサインです。