第四十六回 西熊谷病院 大塚 壽彦先生


略歴
氏名: 大塚 壽彦(おおつか としひこ)
略歴:

昭和33年生まれ
埼玉医大卒業
東京医大勤務
平成5年 牧田中医クリニック勤務  平馬 直樹 老師に師事
東京衛生学園鍼灸科 講師
神奈川衛生学園鍼灸科 講師
同 教員養成科 講師

平成8年 (財)西熊谷病院 勤務 内科・東洋医学 第一金曜、第三金曜外来担当(要予約)

現在に至る

所属学会: 日本中医学会
資格: 認定中医師
認定中医鍼灸師
日本医師会認定産業医
日本医師会認定スポーツ医
研究会: 臨床健康アドバイザー主宰
西熊谷病院 大塚 壽彦先生



ナビゲーター:奈美


仕事が忙しく、なんだか一日があっというまに過ぎていく感じがする今日このごろですが、みなさんは、いかがお過ごしですか?
今回は、埼玉県熊谷市にあります西熊谷病院の大塚先生にお話を伺います。事前の情報では、とてもユニークな先生とのこと…どんな取材になるか楽しみです!(※今回は、先生の御自宅での取材になります。)

西熊谷病院



大塚 壽彦先生にインタビュー
本日は、よろしくお願い致します。とてもユニークな先生と伺いまして、どんなお話が伺えるのか、ワクワクして取材に来ました!

先生:

ハハ!そうですか!
では…今から私が質問しますので、患者さんになったつもりになって答えてくれますか?

え〜!どうしよう!心の準備が…で…では、どうぞ!

先生:

今日は、どうされましたか?

なんだか体がだるくて、熱っぽいんですよね…。

先生:

それは、いつごろからですか?

ここ2〜3日前くらいからでしょうか…。

先生:

もういちど伺いますが、どのくらい前からですか?

ひどくなってきたのは、2日前ごろからだと思います。

先生:


今のやりとりは、日常的に行われている診察中の会話なのですが…例えば、初期の認知症状がある場合には、こんな感じになるんですよ…。
先生:「今日は、どうされましたか?」
患者さん:「最近物忘れがひどくて…」
先生:「ほぉ〜 それは、いつごろからですか?」
患者さん:「え…なんの話ですか?」
お分かりになりましたか?

直前の話を忘れていますね!

先生:

そうなんです。今話していたこと自体を忘れてしまうのです…。
これは、30代の娘さんがつれてこられた60代前半のお母さんの話なのですが、夜になるとせん妄の症状が出てきているような状態でした。
そこで、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)を処方しました。このお薬は、抑肝散に陳皮半夏を加えたもので、胃腸の弱った年配の患者さんには、大変良い効果が出ています。1日2回服用するスティックタイプもありますので、とても飲みやすいお薬だと思います。夜飲む場合は、これに生姜の絞り汁を1滴加え暖かくして飲まれると、冬などは冷え性に効果がありますし、それ以外にもぐっすりと眠れる効果があります。
あわせて、加味帰脾湯(かみきひとう)もお勧めしましたところ、こんなことがありました…。
さきほどのお母さんに付き添いでこられた娘さんが、「同じお薬が欲しい!」と言われるのです。「どうしてですか?」と伺ったところ、「先生には内緒で、母の薬を飲んでみました。そうしたら、それから体調がすごく良いのです!」と言われたので、四診をさせて頂いた上で、同じお薬を処方したことがあります。

効果が出るというのは、その患者さんの体質に合っていた、ってことですよね!

先生:

そうなんです。私は、お薬を出す前に、必ず患者さんに味見をして頂いております。
もちろん、漢方で大切な四診をじっくりとさせて頂いた上でお薬を選ぶのですが、その方の体質に合っている場合には、お薬の味を不快に感じることがないのです。ですから継続的に飲んで頂けることに繋がります。
不快に感じるお薬の場合は、体質に合っていないことがありますし、長く飲み続けることは難しくなります。ただ、より効果が見込める煎じ薬の場合には、飲みにくいといったことがあります。

煎じ薬は、患者さんのオリジナルなお薬ってイメージがあります…。

先生:

そうですね。その方の体質にピッタリの処方をしようと思うと、エキス剤には限界があります。
煎じ薬は、生薬をきざんで調合できますので、微妙なさじ加減が可能になります。簡単に例えますと…ベクトルを合わせることができる、とでもいいましょうか…。

それぞれの生薬の薬効を、より良い状態に向かわせていくってイメージなのでしょうか?

先生:

そんなイメージです。
今現象として表れているのは、本来あるべき体の状態にはない、なんらかの歪みから来ているとして、それをより良い方向へ整えていくべく、各生薬の薬効バランスを念頭に、繊細に調合しながら治療していけるのが、煎じ薬のいいところなのです。現在普及しているスティックタイプのエキス剤は、規格品でありますので、患者さん一人ひとりに合ったオーダーメードという訳にはいかないのです。
ただ、煎じ薬の調合はとても奥が深く、「方剤の心」と言っていますが、なかなか極めることが難しい世界なのです。
そうそう!葛根湯(かっこんとう)というお薬は、漢方薬ではよく知られていますが、面白い話があるんですよね。
落語に、葛根湯医というお話がありまして、こんな感じです…「今日は、どうされましたか?」「頭が痛くて…」「葛根湯をおあがり」「目が痛くて…」「葛根湯をおあがり」「お次のかたは?」「あっしゃ〜付き添いですから!」「お疲れでしょう?それでは、葛根湯を出しておきましょう」…これって、どういうことかお分かりになりますか?

葛根湯が、なんにでも効く?ってことでは…。

先生:

そうなんです。まあ、なんでも葛根湯を出しておけばいいと思っているヤブ医者って話でもあるのですが…でも、漢方薬の中でも葛根湯は、さまざまな多くの生薬から構成されておりますので、結果的に、どのような症状にも効果が期待できる万能薬とも言えるのです。ですから、落語に出てくる先生は、あながちヤブ医者とも言えないのです。
また、葛根湯ほど奥の深い薬はないとも言えます。高名な漢方の先生が、最後までこだわりを持って追究していたのがこのお薬なのです。
漢方医は、さまざまな生薬を調合していかなければなりませんが…ときに、狙いとは逆に作用する生薬もありますので、それを踏まえての調合ほど難しいものはありません。

漢方といえば、すぐに浮かぶのが葛根湯ですが…とても興味深いお話ですね。

先生:

私は、認定中医鍼灸師の資格を持っていますが、つぼと漢方を使っての治療は、とても興味深いと思いますよ!中医学では、あたりまえの治療になっています。
例えば、胸が詰まるという症状は、精神症状のひとつでありますが、中医学ではこれを梅核気(ばいかくき)といいます。この症状には、豊隆(ほうりゅう)というつぼに、もぐさをお灸すると、とても効果があります。そして、漢方薬では半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を使います。

話題はガラっと変わりますが、先生ご自身の健康法はどうされているのですか?

先生:

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)のエキス錠を飲んでおります。これはダイエット効果もありますので、体重の管理には最適です。

食生活では、何か注意されていますか?お好きな食べ物はなんですか?

先生:

豆腐が大好きですね!それから、日本茶をはじめお茶類をよく飲みます。日本酒も最近飲めるようになりました。

最後に、先生がこれから目指されます医療についてお聞かせ下さい。

先生:

老人医療に力を入れていきたいと思っております。そして、「方剤の心」をもっともっと極めて、患者さんに寄り添うことのできる医療を実践していきたいですね!

本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

先生:

そうそう!最後に、百味箪笥(ひゃくみだんす)を見ていって下さい。これは、生薬を保管するものなのですが、江戸時代のものなんですよ!


百味箪笥


取材後記

最初にいきなり質問されて、びっくりしました!でも、認知症の患者さんと先生との実際のやりとりが、とてもよく分かりました。
今回のような取材は初めてでしたので、なんだか新鮮な感動が…そして毎度のことながら、漢方の奥深さに驚きです!漢方ワールドの旅に…終わりはないようです。
最後に出てきました百味箪笥(ひゃくみだんす)は、写真を掲載しておきました!江戸時代からのすごいお宝なんです!

■今回の取材先
財団法人 西熊谷病院
住所:〒360-0816 埼玉県熊谷市石原572
TEL:048-522-0200
FAX:048-525-8384
URL:http://www17.ocn.ne.jp/~nisikuma/

※本文内の情報等は掲載時のものです。
  現在の状況とは異なる場合がありますので予めご了承ください。

■大塚 壽彦先生の現在の勤務先
高齢者ケアセンターのぞみ
住所:〒337-0024 埼玉県さいたま市見沼区片柳1387-1
TEL:048-680-1111
FAX:048-680-1114

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